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Channel: Kuzu's Music Diary
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優しい響きのレクイエム - そして来年はバッハ

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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 514
谷村由美子(ソプラノ) ヴァレリー・ボナール(アルト)
マティアス・ロイサー(テノール) クリスティアン・イムラー(バス)
ローザンヌ声楽アンサンブル
ミシェル・コルボ(指揮) シンフォニア・ヴァルソヴィア
 モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
(2007.5.6 17:00 東京国際フォーラム ホールA – シュパウン)

シューベルトをテーマとした今年のLFJで、僕が最後に聞くのはなぜかモーツァルト。一昨年ペーター・ノイマンとベルリン古楽アカデミーで聞いたこの曲を、昨年フォーレのレクイエムで感動を与えてくれたコルボ翁とローザンヌ声楽アンサンブルの演奏で聞く。巨大なホールAでも、響きが失われないのは証明済み。しかも今回のオーケストラは、ピアニシモでも音が負けることのない、シンフォニア・ヴァルソヴィア。さらに1階5列目中央という最高の席につき、この最高のプログラムに身を預ける。
これくらい近い席にいると、アンサンブルのブレンドされた音とともに、それぞれの音の粒建ちもしっかり伝わってくる。コーラスは、5日間の出演で少し疲れが出たのかと思われる部分もあったが、弱音での芯の通ったハーモニーはさすが。オーケストラも同様で、トロンボーンがこのオーケストラには珍しく思いがけない外し方をする。今回印象的だったのはバスのイムラーさんの説得力のある歌声。その姿勢同様まったくぶれない歌いぶりにはしみじみと惹き込まれていく。
全曲が終わったときの後味は、ほっとする優しいものであった。それは、フォーレのときと共通した暖かい響きによるものかもしれない。逆の見方をすると、モーツァルトのレクイエムでこれまで多く経験してきた峻厳な悲しみの色合いが、比較的薄い演奏だったのかもしれない。モーツァルトの悲劇的な最期を知る身にしてみれば、ついレクイエムに悲愴感を求めてしまいがちだが、死者の霊を安らかに慰めるという曲本来の意図を考えると、これが正しいあり方なのかもしれない、とも思う。

音楽祭もあと数時間を残し、日没が迫る会場を後にする。中庭にはいっそうの人出がみられた。この天気が初日から続いていたらと、繰り返し悔やまれる。そして来年のテーマは「バッハとヨーロッパ」。バラエティ豊かな演奏がまたたくさん聞けることだろう。

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